[掌編小説:016]「私のことをどう思っていますか?」と彼女は住職に問いかけた。彼女は毎週、その寺に足を運んでいた。住職は彼女の悩みを聞いてくれる唯一の存在だった。彼女の問いに、住職は驚き、彼女を見つめた。彼は彼女に心を奪われていたが、それを口にすることができなかった。なぜなら、彼は寺を継ぐために結婚できないと決めていたからだ。「私は…」と住職は言葉に詰まった。彼女は涙をこらえ、立ち上がった。「わかりました。ごめんなさい、邪魔しました」と彼女は言い、寺を走って出た。住職は彼女の後ろ姿を見送った。彼は彼女を追いかけるべきだと思ったが、足が動かなかった。住職は正座が苦手だった。足がしびれて立ち上がれなかったのだ…
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