[掌編小説:012]公園のベンチに腰を下ろした彼は、かつての恋人との甘い思い出に浸っていた。突如として、若い女性が彼の隣に座った。彼女は、かつての恋人の娘だと名乗った。彼は驚いた。なぜなら、かつての恋人と一緒に街を出る約束をして、待ち合わせの場所にしたのが、この公園のベンチだったからだ。彼の心は、過去と現在が交錯し、混乱した。娘は言った。「一緒に街を出ようよ。私じゃお母さんの代わりにはなれないけど……」。しかし、その時、彼は目を覚ました。彼はベンチで居眠りをしていただけだった。娘のことは全て夢の中の出来事だった。彼はホッとした。なぜなら、年をとって街から出る気力も、恋愛をする勇気もなくなっていたからだ。